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エンジンがかからなかった。再度手順を確認し、エンジンスイッチを押したがやはりうんともすんとも言わない。
「まじかよ」
シフトレバーはきちんとパーキングに入っている、ブレーキペダルをしっかり踏みエンジンスイッチを押すが動き出さない。ガソリンは十分に入っていたのでガス欠はありえない、スマートキーの電池も十分だ。あとはバッテリーかセルか、最悪はエンジンか電気系統のトラブルということになるが、装備がなくては対処もできない。
「故障ですか?」
後部座席に乗り込んだ山本が声をかける。
「ぽい」
エンジン始動の手順を指さし確認しながら再度エンジンスイッチを押したが、やはりかからなかった。
「修理を呼びます、副社長たちは社長の車でお帰りください」
山本はスマートフォンを取り出しながら言った。隣に停まった車から、仁志たちがこちらを見ていた、緊急事態が判ったのだろう。
「えーでも向こうも乗れんの、あとひとりじゃん」
定員5人の車に、仁志とふたりの秘書、そして運転手が乗っているのだ。
「秘書のどちらかは私と一緒に待ってもらうので大丈夫です、私から話します」
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