①尚登と良

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尚登の愚痴に良は確かにと頷いた。青年実業家として有名になってしまった今はその富にあやかろうとする者たちが集まってくるのは確かだ。 「じゃあ本当にふたりきりで、静かに、か。それならやっぱり教会とかのほうがしっくりくるね。山手の教会なら近くていいんじゃない? カトリックだと何度か足を運ばないといけないからね。遠くてよければ俺が運営してる京都でもいいよ、言ってくれればいつでも開けるし、神道もあるし」 「あー……そういや、結婚式は神道でやれって言ってたなあ……」 尚登がつぶやくようにいう、伝統だとは言わないが、両親も祖父母もそうだったからそうしろと言われた。つくづく自由がないと思った。 「じゃあ教会式がいいかな。さすがにお寺の準備はないんだけど」 「えっ、お寺でも結婚式ってできるんですか?」 思わず口を挟んだあかねに、良が笑顔で答える。 「お寺も仏事だけじゃないよ、お願いすればちゃんと結婚式を挙げさせてくれる。逆に神道も祝い事だけじゃなくてお葬式もやってくれるしね」 言えば陽葵とあかねがへえと感心したように声を上げた。
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