⑤結婚準備、始動

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サロンに戻りテーブルへと案内する、菊田は一旦奥へ行くと、大きなファイルを手に戻ってきた。 「まずはこちらに記入をお願いします」 A4サイズの紙を2枚差し出す。 「お名前は今後発行するお手紙などに使用します、もう入籍は済ませていても奥様は旧姓でご記入をお願いします。ご住所も招待状を発行するのに使いますので、略字などは使わずにお書きください。もちろんその都度確認をお願いしますけど」 はいと言って尚登がボールペンを手にする。 「あー……住所って、山下の住所にすんのか?」 尚登が聞けば、陽葵は可愛らしく頭を傾げる。 「あそこは仮住まいじゃね?」 「あ、尚登くん的にはそうだね」 陽葵は納得する、元々陽葵がひとり暮らしをしていたマンションに尚登が転がり込んできたのだ。ワンルームである、ふたりで暮らすにはちょっと狭く感じる。 「じゃあ田園調布の住所にしたら?」 「なんでだよ」 そこは尚登の実家だ。 「いずれ引っ越すでしょ」 「誰が行くか」 二世帯住宅の家に頑なに戻らないと尚登は言い張る。尚登は不機嫌なまま山下町の住所を書き記した。 挙式の希望日時や招待客数の目安の欄もあるが、それは既に国井からホテルに伝わっている。
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