⑤結婚準備、始動

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「もちろん当館のフローリストでも承りますが、外部のお店にご依頼される場合は持ち込み料をいただいております。あと、前日までに必ず搬入を……という話は、もう少し期日が迫ってからでもよろしいですね」 菊田は笑顔で言いながら別の紙をふたりの前に置く、何カ月前という見出しの横に、すべきことが書かれていた。 「挙式当日までの大まかな流れです。お時間がありますので当面は特に動きもないので、挙式のイメージを膨らませる期間としていただければと思います、随時ご質問や疑問があればご連ください」 菊田の言葉にうんうんと頷いたのは陽葵だけだ。 「半年前、夏ごろから本格的にあれこれ決めていきましょう」 紙をボールペンで示しながら菊田は言う。 「会場装花やドレスの選びもこの頃からで大丈夫です、どうしても譲れないこだわりの点があるのでしたら今時分から動き出したほうがよいですけど。お着物でしたら反物から作るとか、ドレスもフルオーダーにしたいとか」 「りぃのことだから、衣裳のこだわりなんかもねえだろ」 言われて陽葵は小さく頬を膨らませる。 「……確かに、ないけど……」 結婚自体に夢も希望も持っていなかった、自分が結婚できるとも思っていなかったほどだ。幼稚園くらいのころには漠然とお嫁さん、かわいいなどと思っていたような気もするが。
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