380人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あ……っ、かつらといえば、なんですが……!」
陽葵が小さく手を上げて声を上げる。
「尚登さんのお母さんからかんざしをもらったんです、できれば使いたいので相談させてもらいたいのですが……!」
「かんざし、ですか……」
菊田は逡巡する。これが尚登から発せられた言葉ならば素直に「すてきですね」と言えただろう、だが陽葵が自分の発言を中断させてまで言ったのが気に入らない。
「──そうですね、それはヘアメイク担当とご相談なさるといいでしょう。使えると思いますよ、今は白無垢でも洋風に髪を結うこともありますし、ドレスにかんざしというのも素敵ですし」
言われて陽葵の目が輝いた、かんざしが使えると言ってもらえ、ほっとした。
「秋の終わり頃には装花や演出を決定します。司会の者もこの頃までには決めますので、進行の相談をしてください」
「司会……菊田さんがおやりになるんじゃないんですか……?」
「私はあくまで裏方です。当日の進行は司会任せです、もちろん裏できちんと時間どおりに、おふたりの希望どおりに進んでいるのか見ていますが。会場でおふたりのお世話をするのも専属の者です」
そう言われると急に淋しくなってしまう、最後の最後までそばで完走してほしいと思うのが陽葵のよさだが。
「演出の主なところはお色直しの順番や、キャンドルサービスやケーキカットなどの手順ですね」
最初のコメントを投稿しよう!