⑥邪なウェディングプランナー

1/7
前へ
/202ページ
次へ

⑥邪なウェディングプランナー

それから数日経ったある晩、自宅で寛ぐ菊田珠江の携帯電話が震える。 仕事専用のものだ、電話は出ないし、メールの返信は明日の業務中に行うが、なんだろうと思い開いてみれば、はあ、と大きなため息が出た。 来月挙式を控えている新婦からだった。ウェディングプランナーは専属で世話をしているわけではない、何組かは掛け持ちだ。 そしてこの新郎新婦は格別にちょっとやっかいな客だった。そもそも挙式までの期間が3カ月という短さで飛び込んできた上、希望が多くであれがしたい、これがしたいと注文はつけるが、金はないからできるだけ安くというのだ。 それでも『ベテラン敏腕プランナー』と呼ばれる菊田はなんとか要望に応えてきた。たった三カ月、怒涛のスケージュールだった。なんとか間に合わせようやく来月にはとホッとしたところへのメールである、きっとまた無理難題だろうと思った。 『ごめん、菊田さん! やっぱりドレス、玉響館のにします!』
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

382人が本棚に入れています
本棚に追加