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尚登の疑問には陽葵も肩を竦める、確かにあれこれ決めるのはもっと先でいいようなことを言っていたのにとは思うが。
菊田は画面にある『高見沢尚登』の文字を見て、満足げに頬を紅潮させる。
「はあ、イケメンのイケボ、最高っ」
好みの新郎に余計なアプローチを始めたのは、いつの頃か。
菊田とて、最初から卑しい心でこの仕事始めたわけではない。ウェディングプランナーになろうと専門学校へ通ったのは、人生で最大であろう幸せな瞬間に立ち会いたい、自分の手で多くの新郎新婦のハレの日の手伝いをしたい、そんな高尚な志があったからだ。
いずれ自分も祝ってもらう側になる、プランナーとして相談するうちにこんなこともできるのか、これは真似したいと思うことも多々あった。いつか自分も、いつか、いつか──それを願ううちに時は過ぎていた。周りで職場結婚する者もいるが自分に見合う年齢の男性が入社することもなく、出会いの場を求めてもそこにやってくる男性が自分を選ぶこともなく、年齢だけは重ねてしまった。
焦りや嫉妬を、次々やってくる新郎新婦を心の中で品定めをすることで留飲を下げていた。
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