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「よし、ジェットコースターに乗ろう」
主人がそう言ってくる。
私はお昼を食べ終えたばかりだ。
「わーい、乗ろう」
孫が賛同する。
私の「ちょっと待って」と言う言葉を覆いかぶせるような言い方だった。
もう主人と孫を止められない。
私たちはレストランを出て、ジェットコースターへと向かう。
遠くから見る限り、ジェットコースターは空いているようだ。
「せめて、列が出来ていれば嬉しかったのに、何も起こりませんように」
そう祈りながら、私は主人と孫の後ろを歩いていた。
主人と孫は列に並ぶことなく、ジェットコースターに乗り込んだようだ。
私はジェットコースターに乗った孫と主人をじっと見る。
スピードが速くて、よく分からないところもあったが、手を振って喜ぶ孫に対し、主人の顔は引きつっているように見えた。
二人が無事に乗り終えて、ホッとする私の耳に思いもよらぬ言葉が入ってくる。
「おじいちゃん、もう一回乗ろう」
「あと一回な」
一瞬、主人の顔が嫌そうに見えたが、孫のためなのかそう言って、孫についていく。
このやり取りが三回も続いた。
「もう勘弁してくれ」
そう言って、白旗をあげる主人に対し、孫は「あと一回」とせがんでくる。
私は意を決する。
「おばあちゃんと一緒に乗ろうか」
「いいの」
「いいよ、おじいちゃんが三回乗ったから、おばあちゃんも三回乗るよ」
「やった、あと三回も乗れる」
そう言って、孫はジェットコースター入口へと走っていった。
私は主人に荷物を預けて、孫の後を追う。
正直、ジェットコースターは怖い。
だけど、孫を楽しませたい。
その想いが、私の心を動かしてくれた。
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