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闇市の魔術具
「「・・・・・・」」
「いやっ、すまない。私の知り合いに似てたんだ」
「陛下の知り合いですか?」
「いや、えーと・・・・・・」
「キース様、私情を挟むのは無しですよ」
「ジーク、分かっている。話が脱線してしまった。君の名前は、何て言うんだ?」
「サイモン・シュナイザー」
「サイモン。あなたは何故、私の部下であるジークから逃げたんだ?」
「別に。特に理由はない」
「理由が無いのに逃げたのか?」
「アイツが追いかけてきたから・・・・・・」
「それだけ?」
「ああ、そうだ」
「サイモン、他にも理由があるなら教えて欲しい。王国の危機かもしれないんだ」
(ちょっと大げさかもしれないけれど、これくらい言わないと話してくれなさそう)
「王国の危機? 本当に?」
「ああ。可能性があるものは、全て潰しておきたい」
「俺は何も知らなかったんだ。ただ、いつも取引している奴が、あの絵の扱いに困ってて・・・・・・。闇属性の魔術具だけど、闇市に置いておくよりは市場で売った方が売れるだろうって言われて、譲り受けたんだ。危険なものだって、知らなかったんだよ」
「おそらく、危険なものではないと思うが──私は逃げたのが、気になったんだ。本当に譲り受けた以外に、理由はないんだな?」
「ああ。そいつには俺が困っている時に、助けてもらった事があるんだ。よく確認しないで引き受けちまったが、後悔はしていない。何か問題があるなら、牢屋でもどこでもぶち込んでくれ」
「そんな理由で、牢屋には入れないさ。あの絵を持っておいで。お詫びに私が買い取ってあげよう」
「え?」
「キース様、いいのですか? あの絵は、あまり良くないものかと思われますが・・・・・・」
「ジーク、心配ない。大丈夫だ。あの絵は、私にこそ必要なものだと思う」
「おい、キース様って人。あの絵、けっこう高いぞ。いいのか?」
「心配いらないさ。ジーク、縄を解いてやれ」
「かしこまりました」
ジークが縄を解くと、青年は一礼をして部屋を出ていった。部屋を出ていった後、私はジークに尋ねられていた。
「キース、あの絵は一体なんなんだ? 本当に問題ないのか?」
「問題ないよ。あの絵は、人の魔力を吸い取る魔術が付与された魔術具だ。私以外に、まっとうな理由で買う人は少ないと思うけれど」
「「・・・・・・」」
闇市から街の市場に移されたって事は、私が買うことを想定して移されたのかもしれない。もし仮に、そうだとしたら闇市に関わる誰かが私の魔力を削ぐために買わせるように仕向けたのかも・・・・・・。いや、考え過ぎか。私は世界が滅びない様に気をつけていればいいだけだ。
私は命が狙われる危険より、エリオット様に似た商人や、BLゲームのフラグ回避の方が気になっていた。前世で危険な目に合いすぎて感覚が麻痺しているのかもしれない。攻略対象者のフラグを、エリオット様に会う前に立ててはいけない気がする・・・・・・。なんとなく、そんな気がしていた。
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