救世主

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救世主

「どうもこうも、彼はオーベル・アイザックに頼み込んで、新しい魔術具を作り出してな。わらわは、意図的に彼等のいる場所へ呼び出されたのじゃ」 「え? 呼び出された?」 「過去と未来では、同時に存在することが出来ないからな。思念体じゃ・・・・・・。しかも、アイツは高慢な態度でわらわに取り引きを要求してきた」 「取り引き?! なんで??」  私がいなくなった後に、何だか大変なことになっているな・・・・・・。そう思ったが、地の精霊であるノーム様は、かなり怒っているようで、深く事情を聞くことは出来なかった。 「来ておるよ。オーベルとエリオットも、こちらの世界へ」 「!!」 「しかしながら、神の条例違反スレスレの内容じゃ。罰として2人には自分から前世の名前や記憶、出来事など自分と関連づけるような事を言ってはならないし、これから起こる未来の出来事に対しても口出ししたり、干渉してはならないとも言ってある。それから、どんな身分や格好になっても文句は言うなとも言ってある。下手をすれば、お互い分からないまま一生終わるだろうな」 「もし、その内容に違反したら、どうなるんですか?」 「そうじゃな。天界──神の世界で下働きをさせようと思っておる」 「下働き・・・・・・」  神の世界での下働きが、どんなに大変なのかは分からなかったが、深くは聞けなかった。余程ひどい仕事内容なのだろうか。 「もしかしたら、物凄く変な奴に転生してるかもな。ジェイドは会った時に、すぐに分かるだろう。たぶん、聞かなくても分かる」 「??」 「それでは、伝えることは伝えたからな。世界が滅ばぬよう、気をつけて欲しい」 (えっ?! 気をつけて、どうにかなる話なの??) 「そういえば、ノーム様は神様だったのですね。てっきり、四大精霊かと思ってましたわ」 「今はな。神の世界では、話し合って次の十二神を決めるのじゃ。今の四大精霊は、わらわの他に水、火、風の精霊がそれぞれ十二神の役割も請け負っている。じゃが、1億年ごとに会議があって、人々に合った十二神を選びなおすのじゃ。人がいなければ、神の存在などあっても無くても同じようなものじゃろうからな」 「私に世界を救うなんてことが出来るのでしょうか? それに、なぜあのような場所にいたのかも分かりませんし・・・・・・」 「わらわにも、詳しいことは良く分からんのじゃ。今回の件においては、総督の神であるヴァリアスの判断じゃ。それも含めて、そのノートに書いてある。後でよく読んでおいてくれ」 「いや、それ以前の話で・・・・・・」 「どうやら、時間切れの様じゃ」 「え?」 「そなたの健闘を祈っておる」  再び目の前が白く光ると、別の空間へ転移するのを感じた。気がついた時には、私は先ほどまでいた馬車の中へ戻っていたのだった。
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