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新しい作戦
「やはり、そうでしたか・・・・・・」
「ジーク、何か分かったの?」
ジークの手の上には、前世で使っていた時と同じ様な計測器がのっていた──部屋の明かりを消すと、絵を窓の近くに立て掛けて呪文を唱える。
「これは魔術具ですが、絵の裏に魔術陣が描いてある様です──フロウ、マジック!!」
ジークが呪文を唱えた瞬間、絵の裏に描いてある魔術陣が、絵の上に浮かび上がった。奇妙な紋様の魔術陣は、キラキラと白く光りながら、まばゆい光を放っている。
「えっ?!」
「前世、魔の森で見た魔術陣ですよ。ほら、キース様が識る力で破ってしまった結界の中にあった魔術陣です」
「ああ、あれが──そう」
「陛下。私に、この魔術陣の改良をさせてもらえないでしょうか?」
「改良?」
「どうやら、これは基礎的な魔術陣のようです。これを改良して、魔術を吸収しやすい魔術陣を作ります。少し大きめの石などであれば、魔術陣を描けると思います。それを少しずつ、森へばら撒きましょう。時間は掛かるかもしれませんが、新しく取得した陛下の転写魔術があれば、量産することも、さほど難しくないかと思われます」
「・・・・・・なるほど。魔女に森にある魔素を使った魔術を使わせないためね」
「それから、魔力増強装置を開発します。前世で使っていた物と同等か、それ以上の物を作ります」
「えっと、それは・・・・・・。ジークが使うの?」
「私が使っても構いませんが、一応、陛下が使う予定の物を作ります」
「その、大丈夫かしら? 自分で言うのも何だけれど、私の魔力、他の人が知ったらビックリするくらい多いのよね」
「存じ上げています。計測器を陛下へ向けると、針が振り切れて計測不能になってしまうので・・・・・・」
「前にも言ったけど、膨大すぎる魔力を抑えるために、このペンダントをつけたり、絵を買ったりしたのよ。増強した魔術を使って、この国が滅びてしまわないか、不安だわ」
「大丈夫です。吸いとって多くなりすぎた魔力は、全て石に封じ込めましょう」
「石に?」
「第一段階が、ある程度成功したら、森に結界を作ります。その中に魔石を置き、魔石の中に魔力を封じ込めましょう。半永久的に魔力を閉じ込められるように、ブラックヘアンを使います」
「ブラックヘアン・・・・・・。聞いたことがあるわ。確か、闇魔術で対象の物体に亜空間を作って、半永久的に魔力を封じ込めておける魔術よね。成功させるのは、かなり難しいと聞いたけれど、大丈夫なの?」
「その辺は・・・・・・。協力していただけると助かります。今の私の魔力は限られておりますので」
ジークの目は泳いでいた。きっと、協力してもらえる事が前提での作戦なのだろう。魔女を倒すためなら、王族とかは関係無しに、こちら側で出来る限りの事をすべきだと思った。
「分かったわ。ここまで来たら、何でもやるわよ。石の転写も、魔力増強の魔術具も、ブラックヘアンも・・・・・・」
「キース様!! 恩に着ます」
ジークは涙を流しながら喜んでいたが、私は再び連れ去られたジュールの事を思い出していた。
「ジュール、無事だといいんだけれど・・・・・・」
窓の外を見ると、天気は晴れから曇り空へ変わっていたのだった。
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