13人が本棚に入れています
本棚に追加
古の魔術と魔術具
──その時だった。
私の後ろからついて来ていたと思われたジークは、いつの間にか魔女の背後へ回っていた。気がついた次の瞬間には、魔女は拘束されていた。
「何をするんじゃ、離せっ」
「悪いが、一緒に城へ来てもらう」
ジークが魔封じの手枷を魔女に嵌めると、魔女は顔を歪め、無理やり立ちあがると苛立ったかのように、足を踏みならした。
「召喚！！ 水龍の陣！！」
少しして地響きがしたかと思えば、屋敷の後ろにある泉から龍の形をした水の塊が噴き上がった。どうやら魔女が足を踏みならしたことにより、魔術陣が発動して水龍が現れたようだ。
「何をする？！」
「それは、こっちのセリフじゃ！！」
ジークは魔女と揉み合いながらも、予備の手枷を魔女の足に嵌めていた。その間にも、水龍はこちらへやって来て、口から氷の塊を吐き出していた。
「危なっ･･････」
何度も攻撃してくる水龍の氷の刃を避けていたが、近くに転がっていた氷の塊に躓いてしまった私は、尻もちをついていた。
「キース様！！ 爆裂火炎魔術！！」
ユリウスは私の前に出ると、水龍へ向けて手を翳し、私が付与した魔術を放っていた。全てを焼き尽くすような炎の魔術に、水龍と氷の魔術は溶けていた。それと同時に周りにあった氷も全て溶けている。
「ユリウス、頼む！！」
ジークは、手枷と足枷を嵌めた魔女に更に縄を巻いていた。ジークはユリウスめがけて魔女を投げていた。転がってきた魔女は気絶したのか、気を失っている。
ジークは、そのまま泉へ駆けていくと泉の底に描かれていた魔術陣を見ていた。
「どうやって、これを描いたんだ。いや、待てよ。これは･･････」
「ジーク、どうかしたのか？」
「陛下。この魔術陣、水龍の召喚魔術陣となっておりますが、術の応用で変換出来るものかと思われます」
「変換？」
「古の魔術で、変換応用魔術があったのは覚えていますか？」
「いや･･････」
「簡易的な魔術陣に、後から術を加える魔術です。色々問題があって、前世では禁忌の魔術に指定されていましたが、この時代では禁止されていない」
「ジーク、まさか･･････」
「この魔術陣に干渉します」
そう言うと、ジークは懐から取り出たペンで、側に別の魔術陣を描いていった。
「それは、魔術具？」
「はい、この時代にしかない魔術具です。魔術の初心者が、魔術陣を描く練習で使う魔術具ですよ。書き加えることによって、二度と召喚できないようにすることも可能です」
最初のコメントを投稿しよう！