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魔力の付与
「キース様！！ 逃げて」
後ろを振り返ると、ジュールが顔を歪めて苦しみながら、こちらへ手を伸ばしていた。何故かジュールの身体からは湯気が出ているように見えていた。
「どうしたんだ、ジュール？」
ジュールに近づいていくと、それが魔術に抵抗しているためだということが、何となく分かった。ジュールが着ているマントに隠れていて見えなかったが、ジュールの身体の周りには、ぶ厚い緑の光があり、その中には黒い塊も見えていた。
私が手を差し出すと、振り払われた。その振り払った手で、私を攻撃しようとしているのが見えて、ユリウスが私の前へ出て来た。
「ランブレ！！」
私は識る力を使って、光魔術を行使した。光魔術は使えないので、ネモフィラ嬢の力を借りて吸収していた魔術を放出する。
ジュールの中に見えていた緑の光は、渦巻きながら収束し、消えていった。
「うっ･･････」
「ジュール！！」
うつ伏せに倒れたジュールへ手を伸ばすと、消えた光の中で力なく笑うジュールがいた。
「キース様が無事でよかったです。あなたが誰かは分かりませんが、それでも私にとってはキース様です。魅了魔術を使っていたので、本当の恋人同士とは違ったかもしれませんが、それでも貴方を愛していました」
「ジュール、もういい喋るな」
ジュールの命が尽き果てようとしているのを感じた。私はジュールの手を掴むと、祈りを捧げた。
「もし、生まれ変わることがあったら、貴方をもう一度、好きになって、今度はきちんと愛を伝えて貴方と愛し合いたいと思いました」
「ああ･･････。そうだな」
ジュールが息を引き取る瞬間、戻ってきていたジークが私の肩に手を置いた。
「陛下。私に光の魔術を付与してもらえないでしょうか？」
「ジーク？」
「お願いします」
「分かりました･･････。いきます」
私はジークへ向けて手を翳した。身体の中にある残りの魔力を全て与えるつもりで、ジークへ付与していった。
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