ユリウスの限界

1/1
前へ
/63ページ
次へ

ユリウスの限界

「うわっ・・・・・・。ホントにすごいですね、キース陛下の魔力は。確かに桁違いだ」  ジークは受け取った魔力を確かめるように、自分の手のひらを握ったり開いたりしていた。 「これで、何とかなりそうです」 「何とかなるって?!」 「ヒールエレメント!!」  ジークは、自分の手のひらをジュールへ向けると魔術を放った。すると、息を引き取ったかに見えたジュールが、息を吹き返したのだった。 「・・・・・・生き返ったの?」 「まさか・・・・・・。私にそんな力はありませんよ。ギリギリ間に合っただけです。あとは、ジュール殿の生命力ですかね」 「本当に? よかった・・・・・・」 「水龍の陣について少し研究する余地があるようです。それとは別なのですが・・・・・・。湧き出てきている水ですが、おそらく治癒の効果がある水だと思われます」 「治癒? 水は何処からか、湧き出ているの?」 「おそらく、地下水ではないかと・・・・・・」 「井戸は造れないかしら? 治癒の効果があるのなら、近くの住民がケガをした時に使えていいんじゃない?」 「出来ないことはないですが、噂が広まれば悪用されかねないかと」 「それなら、結界を張るのはどう? 悪意がある人は入って来れないようにするとか」 「試してみます。あの、キース様。私はもう魔力が・・・・・・」 「もちろん──付与するわ」  その光景を見ていたユリウスが、急に口を開いた。 「あの、キース様。私は城へ帰ってもいいでしょうか?」 「どうしたの? ユリウス」 「私は、もうこの場所に必要ないかと思われます」 「え?」 「捕らえた魔女を連れて、近衛兵と共に城へ帰ります」 「待って、ユリウス!!」 「すみません。私がいけないんです。私が未熟だから、余計なことばかり考えてしまって・・・・・・。すみません、失礼します」  ユリウスは、それだけ言うと、近衛兵と魔女を抱えて城へ帰っていった。 「ユリウス・・・・・・。一体、どうして?」 「陛下? あの、結界についてですが・・・・・・」  ジークの声に我に返った私は、自分で自分の頬を叩くと気合いを入れた。 「ごめんなさい。ボーッとしてたわ・・・・・・。泉の結界の話よね?」 「もともとある魔術陣を囲うように、防御結界を張りました。これで、滅多なことがない限り、無関係の者が中へ入ってくる事はないでしょう」 「・・・・・・そう」 「陛下? 少しお休みになられたほうが・・・・・・」 「いいえ。そうも言ってられないわ。泉の整備を進めましょう」  私がそう言った瞬間、後ろから現れた影に抱きしめられた。()られる──そう思った時には遅かった。 「キース様!!」  その瞬間、意識を失ってしまった私は、暗闇の中へ落ちていったのだった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加