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地下室
私達は屋敷の中へ入ると、2階にある部屋から屋敷の中を順に見廻っていった。伯爵の屋敷より少し見劣りはするものの、屋敷の中は貴族の屋敷とたいして変わらない造りだった。元王妃ということもあってか、使用されている家具は、一流の職人が作ったと思われる物ばかりだった。
「1、2階に問題がないとすると、地下室ね」
大広間とダイニングの間にある地下へ続く階段を見ると、そこだけ異様に暗かった。妖怪やお化けが出て来そうな雰囲気がある──しかしながら、この世界に幽霊という概念はない。
私は好奇心に駆られて、地下室へ続く扉へ向かって歩いていった。すると、再びコウモリが目の前を横切った。
「キース様!!」
「ユリウス、大丈夫よ。地下室から出て来たみたい」
見れば地下室のドアは半開きになっていた。そっと開けると、そこは物置のような小さな部屋になっており、その正面に奥へ続く扉があった。
「開けるわよ」
「えっ・・・・・・」
奥のドアを開けると、岩肌が見えた。洞窟のような通路を抜けると、水が流れている通路へ出る。
「まさか──インテクト!!」
そこは、以前に来たことのある森の中にある石碑の下の通路だった。平坦な道が城がある方向へ向かって続いている。ただ前に見た時と違うのは、水が流れているということだった。少し進むと、泉の地下付近なのか、天井付近に魔石が埋め込まれたボール型の魔術具が置かれていた。どうやら、魔石を使って水を地上へ押し上げているようだった。
「凄いわね・・・・・・。なぜ、泉には治癒の効果があるのかしら?」
「森の恵みでしょうか? 身体にいい植物や、身体にいい温かい水が出るという話も聞いたことがありますし」
「とりあえず、地下の水路を辿ってみましょう。何か分かるかもしれないわ」
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