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見返り
「今日もありがとね、琉人くん。はい」
「いえ、深雪さん。こちらこそありがとうございます」
ある放課後のこと。
夕暮れ時、縁側にぐったり腰掛けている僕に冷えたグラスを差し出し労ってくれるポニーテールの女性。彼女は西条深雪――地元の大学に通う二年生で、我が浦沢家と懇意の間柄にある西条家の娘さんだ。……まあ、この由緒正しき西条さん家と、紛うことなき一般庶民の浦沢家にいったいどのような縁故があったのかは、未だに謎でしかないのだけども。
そして、僕はと言えば――さっきまで、ここ西条家の広い庭の草むしりを手伝っていたわけで。
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