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ここに追いかけてきた付き人のルーナが到着する。
この黒髪の美貌、このドレスの着こなしである。
軍参謀でもあるルーナは、
王子がぶつかってしまった相手が、
我がフロストヴァルドの宿敵、サンフォーレ皇国の皇女殿下、
「リリア・サザンウィンド」
であることを確認した!!!
これは、外交問題に発展しかねない「異常事態」である。入学当初に発生した重大トラブルにルーナは戸惑いながら、どうこの場を収拾をつけるかを考えながら、とりあえず挨拶をして時間を稼ぐことにする。
念のため防護魔法を準備しながら次のように続けた。
「こ、これは、失礼いたします。リリア皇女殿下、王子が失礼を申し訳ありません。アッシュ・ノースフォード、フロストヴァルドの王子の付き人、ルーナ・ノヴァと申します」
しばらくの間の後、この女性、リリア・サザンウィンドは、
少し顔を赤らめながら口を開いた。
「よいのです。私も暇をしていましたし、アッシュ様に怪我もなくて幸いでした。私は式典にあまり興味もないのです。
調度よいですから、アッシュ様、私と一緒に街を散策くださらない?
猫にでもぶつかったと思って」
と付き従えていた猫の獣人に目配せをする。
「こちらは、ノワール、わたしの付き人ですわ。
アッシュ様、私たちと、今日少しだけ、お供頂けますか?」
「は、はい、喜んでお供させて頂きます。」
緊張で、ぎこちなく王子は対応した。
アッシュ王子、付き人のルーナ、リリア皇女、獣人のノワールの一行は、入学の式典を完全にすっぽかして、学園都市の街を散策することになった。
これが両王国を揺るがすことになる二人の出会いであった。
フロストヴァルドの王子、
アッシュ・ノースフォードはこの時、14歳であった。
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