第1話 どうして、ラブコメでは初回にパンをくわえて走るのでしょうか♪

3/3
前へ
/185ページ
次へ
ここに追いかけてきた付き人のルーナが到着する。 この黒髪の美貌、このドレスの着こなしである。 軍参謀でもあるルーナは、 王子がぶつかってしまった相手が、 我がフロストヴァルドの宿敵、サンフォーレ皇国の皇女殿下、 「リリア・サザンウィンド」 であることを確認した!!! これは、外交問題に発展しかねない「異常事態」である。入学当初に発生した重大トラブルにルーナは戸惑いながら、どうこの場を収拾をつけるかを考えながら、とりあえず挨拶をして時間を稼ぐことにする。 念のため防護魔法を準備しながら次のように続けた。 「こ、これは、失礼いたします。リリア皇女殿下、王子が失礼を申し訳ありません。アッシュ・ノースフォード、フロストヴァルドの王子の付き人、ルーナ・ノヴァと申します」 しばらくの間の後、この女性、リリア・サザンウィンドは、 少し顔を赤らめながら口を開いた。 「よいのです。私も暇をしていましたし、アッシュ様に怪我もなくて幸いでした。私は式典にあまり興味もないのです。 調度よいですから、アッシュ様、私と一緒に街を散策(さんさく)くださらない? 猫にでもぶつかったと思って」 と付き従えていた猫の獣人に目配せをする。 「こちらは、ノワール、わたしの付き人ですわ。 アッシュ様、私たちと、今日少しだけ、お供頂けますか?」 「は、はい、喜んでお供させて頂きます。」 緊張で、ぎこちなく王子は対応した。  アッシュ王子、付き人のルーナ、リリア皇女、獣人(じゅうじん)のノワールの一行は、入学の式典を完全にすっぽかして、学園都市の街を散策することになった。  これが両王国を揺るがすことになる二人の出会いであった。 フロストヴァルドの王子、 アッシュ・ノースフォードはこの時、14歳であった。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加