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残された女性たちは、井戸端に集まりながらも、
不安な表情を浮かべていた。
昨日、イザベルを批判していたアンナがキャンプからいなくなっているのだ。
「…あれ? アンナは? 今日は遅いのかしら?」
「朝から、見かけないわね… どうしたのかしら…」
ヨハンは、再びいつもの笑顔で現れた。
「おはようございます、奥様方。今日もいい天気ですね!」
「あら、そうですか? それは心配ですねぇ…
昨日、ガレス様とお話しされていたので、
いい稼ぎを紹介いただいたいのかもしれません。」
そして、わざとらしく明るい声で、昨日の出来事を忘れさせようとする。
「奥様方、昨日のことは、もう忘れましょう。
過ぎたことを、いつまでも気にしても仕方がありませんよ。」
「それよりも2度とあのような誤解のあるようなことは口にしないことですな。」
女性たちは、恐怖から何も言えず、ヨハンの言葉に頷くしかなかった。
「…そうね… ヨハン様の言う通りだわ…」
「…ごめんなさい… つい、うっかり…」
ヨハンは、満足そうに微笑みながら、井戸端を後にした。
その夜、残された女性の一人は、自分のテントで震えながら、心に誓った。
「アンナ… あの子、どこへ行ったのかしら… きっと… きっと、ガレスに…」
「…もう… 何も言わない… 誰にも… 言わない…」
こうして、ヨハンは、巧みな話術とガレスへの密告によって、
難民キャンプに沈黙を強いるのであった。
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