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ポトニャフ将軍は、王の命に逆らい、首都防衛、リプス市民の避難のために残留した。
ポトニャフ将軍は戦の前に残った将兵に語り掛けた。
「諸君、私ポトニャフは今や反逆者となった。
公の命に逆らい、今から我が友を救うためリプス防衛にこの身をささげる。
たとえ反逆者となろうとも、我らの首都リプスを、我らが友を守る覚悟があるものは一歩前へ!
覚悟がないものは即刻逃亡し、将来の国の再建に備えよ!」
兵は皆は一歩前に出る。逃げる者は一人も出ない。
ポトニャフも兵士も、勝利の可能性が一切ない戦いなことは十分承知である。大国であるサンフォーレの正規軍には、小国の精鋭部隊など、紙切れに等しい。魔法防御に守られた騎兵やチャリオッツへの対抗手段などあるはずがないのだ。
しかし彼らの前線が一たび破られれば、愛する首都において略奪が始まるのである。彼らの生活、大事にしていた夢、大切な、友人、家族、恋人が、全て破壊されるのである。
許されるべきではないことが、これから行われようとしているのだ。敵の前進を遅延させる一縷の望みでもあるのであれば、彼らは喜んで自らの命を差し出すことだろう。
エリドールの精鋭隊、ホワイトタイガー隊、ホワイトウルフ隊、ホワイトクロー隊は、装備にも補給にも事欠く過酷な環境の中、首都リプスの民を守るために尽力し、特攻に次ぐ特攻を行い、そして全滅した。
首都を蹂躙され、民を虐殺され、敗戦した兵士のことはすぐ皆が忘れてしまうだろう。このようにして、ポトニャフとポトニャフ率いるエリドールの主力部隊は、壊滅した。
エリドールから、良心が消えようとしていた。
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