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しかし、それでも怒りは収まらない。
なんで、そんなクソみたいな有象無象に、俺の大切な女の子が傷つけられないといけないのか。
「……俺は、露香が山のよーなご飯見て、目をキラキラさせてんのが好きなの。美味しい美味しいって食べてるところが好きなの。それを曇らせる輩とか、マジ消えてほしい」
「ありがと、繋ちゃん。でも、やっぱりさ、あたし女の子だしさ……」
「それこそ男女差別ってやつだろ。お前を傷つけたい奴に乗せられる必要ないから!」
「でも、その、毎日ご飯の写真アップしてたのに、急にアップやめると屈服したみたいに見られそうだし。それに、その……」
「ったく」
その時、ぐう、と露香のお腹がなった。チャーハンはもう半分以上なくなっているのに、まだまだお腹がすいているらしい。それ見たことか。俺はぐい、と自分の前にあったハンバーグ定食を彼女の前に押しやった。
「やる」
「え、でも……」
「俺はもお腹いっぱいだからいい。なんなら、他にも頼むか?露香が“ヘルプ”してくれるなら食べてみたいものいろいろあるんだけど。俺、ちょっとしか食べられないから、助けてくれると嬉しいんだけど?」
どう言えば伝わるんだろう。
どうすれば、彼女にいっぱい貰った、この山盛りの幸せを伝えられるんだろう。
迷った末、俺はあの日と同じようにぶっちゃけてしまった。
「俺、四年になったら即就職決めるから。絶対そうするから、だから」
彼女が所属することが決まっているレスリングの実業団。その会社の内定。いくつも募集している職種があるし、英語もパソコン系の資格もとりまくったので結構武器にはなるだろう。
絶対取ってやる、と俺は心に誓った。同じ会社で、ずっとずっと傍で露香を守ってやるんだ、と。
「卒業したら結婚してくれないか。ぜってー幸せにしてやるし、幸せになってやるから!」
雰囲気もへったくれもない。
それでも露香は――泣きそうな顔で、俺が差し出したハンバーグを一口食べたのだった。
「……美味しい」
染まった頬で、彼女は告げる。
「一緒に住んだら、繋ちゃんのご飯も食べられる?料理上手だもんね」
「おう、毎日作ってやる。山のようにな、覚悟しとけよ」
「……うん!」
今日もいっぱい、山盛りの愛を届けよう。
君の笑顔以上に、お腹がふくれるものなんてないのだから。
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