やまもりラヴァー!

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やまもりラヴァー!

 相変わらずすごい。  俺は目をぱちくりさせて、目の前の光景を見つめた。  皿の上にこんもりと、それはもうこんもりと山盛りになっているチャーハン。今“目の前”と言ったが、正確には俺のすぐ前というわけではない。真正面に座っている人物の前に置かれているものだ。  ちなみに俺の方はというと、女性用のミニカレーライスがちんまりと皿に盛られている。実際よりハーフサイズの代物。これでも、小食の俺にはちょっとだけ多い。 「うっほほーい!」  で。  そのチャーハンの前に座っているのが、俺の彼女である露香(つゆか)である。彼女は大きな目を少女漫画のようにキラキラさせて、チャーハンの山を見つめてスマホで写真を撮っている。 「相変わらず美味そうでござるのー!うふふふふふふ、いい匂いじゃー!」 「露、ほんっとここのチャーハン好きだよなー。散々迷った挙句、いっつもチャーハン選んでる気がするんだけど」 「理由はいくつかあるかな。一つ、ご飯モノは腹が膨れる。二つ、ここのチャーハンは肉成分多めで非常にうまし。三つ、アプリで大盛券が配信されていてお得感マシマシ。……違うやつも気になってるんだけど、三つ目が特に大きいんだよ。あたし、昔っから大食いだからさあ……普通サイズじゃ全然足らないんだよね。ま、うちの家族みんなそーなんだけど」 「まあ、露んちって家族全員でっけえもんなあ」  彼女の家は、マジで体育会系が揃っている。いやほんと、文字通りの意味でだ。  彼女の両親は実業団でバスケットボールをやっているし、露香も子供の頃からレスリング少女である。兄はサッカーで、姉は柔道。全員、スポーツが得意で、つまり消費カロリーが非常に激しいのだ。  そして遺伝的に体も大きい。大学に入った後露香のご両親と会ったこともあるが、揃いもそろって高身長であっけにとられてしまったものだ。  ちなみに、俺は身長169cmなので、男性としてめちゃくちゃ小さいというわけではない。が、露香の父が身長195cmで、母も身長180cmあり、露香も身長178cmある。しかも本人はまだ伸びるつもりでいる。骨密度もかなり高く、筋肉もつきやすいらしい。そりゃ、食べる量が多いのも当然だろう。 「昔から食費のやりくりには苦労してたみたいよ」  あははは、露香は苦笑いしてみせる。 「家族五人、みーんな食べまくるからねえ。流石に父さんたちは年もあって食べる量減ってきたとは思うけど、それでも(ケイ)ちゃんの倍は食べるし。つか、繋ちゃんはもっと食べるべきだと思うけど」 「俺はこういう体質だからしょうがないんですー。それに……」  露香がいっぱい食べている姿を見るだけで満足だし、とは心の中だけで、なんとなく恥ずかしい。 「ねえ、そのカレー美味しい?一口貰ってもいい?あたしのチャーハンも一口あげるからー」 「はいはい」  心の中でにやけながら、俺たちはいつものように食べかけのカレーとチャーハンを交換する。  彼女が食べたがるので、こっそりこのレストランではいつも違うものを頼むことにしているのは、ここだけの話だ。
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