あるチョコレート菓子

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「……」  夕食を食べていても、お風呂に入っていても、冷蔵庫に入れたあのチョコレート菓子のことが頭から離れなかった。湯船につかってぼーっとしていると、疲れたときにあれ食べたらおいしいんだよなーとか、風呂上がりに食べたら最高においしいだろうなーとか、そんなことがずっと気になって仕方なかった。 「……買わなきゃ良かった」  いやそもそも、いつものように帰っていれば、あのチョコレート菓子を買うこともなかった。それに、私があのお菓子のコーナーに寄らなければ、大好きなチョコレート菓子が目に入ることもなかったのだ。  不幸な偶然が重なったとはいえ、これは自分で招いた事態である。なんとかしてケリをつけないと。 「……仕方ない」  私は風呂から上がり、寝間着に着替えると、真っ直ぐに冷蔵庫へ向かってチョコレート菓子を取り出す。両手で小さなチョコレート菓子を持ち上げ、じっと見つめた。 ――――買ってしまったものは仕方がない。このまま捨てるのももったいないし、あと一回だけ食べてしまおう。  二度と食べないと決めたけど、こんな思いをするくらいなら、潔く食べてしまった方がいいはず。この一回を最後に、大好きなチョコレート菓子を食べないことにする。  私はそう決意し、チョコレートを一口食べた。
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