あるチョコレート菓子

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 次の日、私はチョコレートを小袋に二つほど詰め込み、同じ小袋を大量に作っていく。とりあえず段ボール一つ分くらいチョコレートの小袋を作ると、かなりの量になった。  そして、私は家の近所の人や会社の知り合いなど、今できうる限りの人脈を使ってチョコレートを配り歩いた。 「あ、せんぱ~い。またチョコレート配ってるんですか?」  職場で後輩ちゃんに会うと、また元気よく話しかけてくれた。 「そうよ。今日も貰ってくれるかしら?」 「もちろんですよ!」  私は小袋をカバンから取り出し、後輩ちゃんに渡す。後輩ちゃんは嬉しそうに受け取ってくれた。 「あ、そうだ先輩。昨日のお礼に私からもプレゼントがあります」 「え、お礼って?」 「はい。チョコレートです!」 「……!」  後輩ちゃんが私に見せたのは、あの大好きなチョコレート、その抹茶味である。これは数回しか食べたことがないけど、こちらもいつものチョコと同じくらい、とんでもないおいしさのチョコレートである。 「先輩がいつもお裾分けしてくれるんで、私もこのチョコレート大好きなんですよ。ですので、これお礼です」 「え」  すると、後輩ちゃんは私の手の上にポンッとチョコレートを置き、にこにことしていた。 「それじゃあ失礼しま~す。今日もお仕事がんばりましょうね~」  後輩ちゃんはすたすたと立ち去る。チョコレートを受け取った私だけが、ぽつんと一人残った。  ……受け取ってしまった。  もうこのチョコレートは食べないと決めたのに……。 「……」  でも、もらったお菓子を食べないなんて、それは失礼だろう。それに、食べないと決めたのはいつもの味であって、抹茶味は含まれていない。貰い物はノーカンである。  私は包み紙を開けてチョコレートを取り出す。そして、まずは味見をするように一口、抹茶味のチョコレートを食べた。 ――――  そこからの事はよく覚えていない。けど、その日の仕事はとても調子がよかったような気がする。  そして次の日、私の家に、段ボール箱三つ分の抹茶味チョコレートが届いていた。
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