0人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、私はチョコレートを小袋に二つほど詰め込み、同じ小袋を大量に作っていく。とりあえず段ボール一つ分くらいチョコレートの小袋を作ると、かなりの量になった。
そして、私は家の近所の人や会社の知り合いなど、今できうる限りの人脈を使ってチョコレートを配り歩いた。
「あ、せんぱ~い。またチョコレート配ってるんですか?」
職場で後輩ちゃんに会うと、また元気よく話しかけてくれた。
「そうよ。今日も貰ってくれるかしら?」
「もちろんですよ!」
私は小袋をカバンから取り出し、後輩ちゃんに渡す。後輩ちゃんは嬉しそうに受け取ってくれた。
「あ、そうだ先輩。昨日のお礼に私からもプレゼントがあります」
「え、お礼って?」
「はい。チョコレートです!」
「……!」
後輩ちゃんが私に見せたのは、あの大好きなチョコレート、その抹茶味である。これは数回しか食べたことがないけど、こちらもいつものチョコと同じくらい、とんでもないおいしさのチョコレートである。
「先輩がいつもお裾分けしてくれるんで、私もこのチョコレート大好きなんですよ。ですので、これお礼です」
「え」
すると、後輩ちゃんは私の手の上にポンッとチョコレートを置き、にこにことしていた。
「それじゃあ失礼しま~す。今日もお仕事がんばりましょうね~」
後輩ちゃんはすたすたと立ち去る。チョコレートを受け取った私だけが、ぽつんと一人残った。
……受け取ってしまった。
もうこのチョコレートは食べないと決めたのに……。
「……」
でも、もらったお菓子を食べないなんて、それは失礼だろう。それに、食べないと決めたのはいつもの味であって、抹茶味は含まれていない。貰い物はノーカンである。
私は包み紙を開けてチョコレートを取り出す。そして、まずは味見をするように一口、抹茶味のチョコレートを食べた。
――――
そこからの事はよく覚えていない。けど、その日の仕事はとても調子がよかったような気がする。
そして次の日、私の家に、段ボール箱三つ分の抹茶味チョコレートが届いていた。
最初のコメントを投稿しよう!