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好きなアニメのキャラクターやフィギュアで溢れかえっていたかつての部屋とはだいぶ違う。
そのことに一抹の寂しさを感じながら、私は窓の外に目を移す。
レースのカーテン越しに、どんよりとした空が見えた。
やがて戻ってきた桜介は、眼鏡をかけていた。高校当時に愛用していたものだ。心なしか顔が赤い。額を拭いながら、熱いね、と言う。
「熱が出てきたのかな? 寝た方がいいんじゃない?」
腰を浮かせる私を手で制し、桜介は首を振る。
「それはない。もうほぼ通常に戻ってるから。大事を取って休んでるだけ」
「エアコンの温度を下げれば? 私は寒くないし」
「いい。佐倉さんが風邪を引いたら困る」
「じゃあ、上着を脱いだら?」
桜介は無言になり、うろうろと彷徨った。私は困惑し、ただ桜介の動向を見守る。
やがて、桜介は動きを止めると、決心したように上着のボタンを外し始めた。ぶつぶつと「ああ、こんなはずじゃなかったのに……」と呟いている。
桜介は、やけくそといった勢いでコーチジャケットを脱ぎ去った。すかさずパンツにも手をかけ、一気に下ろす。
あまりの狼藉に顔を覆いそうになったが、ワイドパンツの下から現れたものが目に入り、固まった。
慣れ親しんだ紺色の布地のそれは、高校の体操着だった。
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