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「俺、御堂の必殺技をマスターするためにサークルまで入ったのに!」
「御堂が投げるのはダーツじゃなくて薔薇の花だよ」
「知ってるよ! でもっ薔薇の花を投げるサークルなんてないじゃん!」
――その通りだ。
「一応華道部も覗いたけど、花材は投げないし、女子ばっかりで怖いから止めた」
桜介はじとっと恨めしそうに私を見ると、膝を抱えて顔を埋めた。
「やっぱり……そうだったのか。もしやと思ったけど。佐倉さんはもう俺の知ってる佐倉さんじゃなくなっちゃったんだね。俺なんかとつるむのが嫌になったんだ」
「そっ、そんなことないよ」
私は身を乗り出し、テーブルの向こうでいじける桜介に訴える。
「おうちゃんみたいな人は大学にだっていないもん! 私はおうちゃんと一緒にいたかったよ。ずっとそう思って……た」
桜介は再び顔を上げ、こちらを凝視した。その強い視線に怯み、語尾が小さくなる。
「じゃあ、なんで連絡くれなかったの。学内でだってずっと俺のこと避けてたよね? 視線も合わせてくれなかった。もしかして嫌われたんじゃないかって本気で悩んだんだよ、俺」
私は身体を戻し、縮こまった。
桜介がそんな風に悩んでいたなんて、思いもよらなかった。
いわゆるカースト上位グループに所属している桜介の傍には、常に綺麗な女子がいたし、上級生の女子からも人気があると聞いてもいた。冴えないかつての同級生など記憶の彼方へと押しやり、ウハウハで大学生活を満喫していると思っていたのだ。
「考えても嫌われる理由が思いつかないし、ヲタ活なんかに興味をなくしてリア充に走ったのかとも考えたけど、どこのサークルのコンパでも見かけないし」
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