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「あ、まあ、地味に生活してたよ。うん」
「彼氏ができたのかと探ってみたけど、それらしき影は見当たらないし」
「面目ない」
私は俯いた。イメチェンをけしかけたのは私なのに、まったく成果を上げていない。
「謝らなくてもいいでしょ!」
桜介は掌でテーブルを叩いた。私は正座をしたまま飛び跳ねる。
「だから! 俺は、『実写版御堂』を目指したんじゃん! さすがに佐倉さんも無視できないでしょ、リアコしてたくらいなんだから!」
私はおそるおそる視線を上げる。
テーブルの上で拳を握る彼の表情は真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えない。
「えっと……本気で言ってる、んだよね?」
「当たり前だよ。俺さ、美容院に御堂の切り抜きを持って行ったんだよ? これと同じにしてくださいって。御堂の来ている服と同じなのをネットで探して徹夜したし、痛いの嫌いだけど頑張ってピアスも開けた!」
私は改めて桜介を観察した。なるほど両耳には合計三つのピアス穴が開いている。そういえばどことなく御堂に似てなくもない。とはいえ、私の知っている御堂はリッジパーマの長髪、白い学生服の胸ポケットには一輪の赤い薔薇。ちょっぴり天然でアンニュイな王子キャラである。
「大学に進級してからちょっとチャラくなったんだよ御堂は。キャラが変わり過ぎだって一部で騒がれていたみたいだけど、俺は許容範囲内だと思う。そもそも御堂の母親はデザイナーズブランドの経営者って設定だし、息子を広告塔にしようという傾向は白菊ハイスクール編でも見られた」
「確かに。御堂登場回で、ママのブランド服の専属のモデルをしていると言っていたね」
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