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「白菊学園のパンフレットでもモデルを務めている。あそこの制服は御堂ママがプロデュースしたものだ」
「ちょっと待って! あの美貌と天然タラシ発言にチャラさが加わったら無双じゃん! やばっ!」
桜介は曲げた指の節で眼鏡を引き上げる。
「ヤバいんだよ、佐倉さん。なんでも女子ファンが三倍増らしい」
「ええっ、ねえ、おうちゃんちょっとやってみてよ。新生御堂は履修済みなんでしょ? 見たいぃぃぃ」
「……仕方ないな、着替えてくるから待ってて」
それから桜介は御堂のお気に入りスタイルだというファッションに身を包んで現れた。素肌にオーバーサイズのカーディガン、ワイドパンツ、ともに真っ白という斬新な組み合わせだが、コンタクトを外し髪型もばっちりと整えた桜介に不思議と似合う。胸元に揺れるゴールドのネックレスとクロスダングルのピアスはメッキの安物だというが、雰囲気は出ている。
そして、手には百均で買ったという造花のバラを掲げていた。
「きゃああ! おうちゃんかっこいい! 御堂っぽいよ!」
私は鞄からスマホを取り出し、構える。
「おうちゃん御堂立ちして! 斜め45度でバラを口元に、視線は斜め下。そうそういいよぉ!」
連射するシャッター音が私の発する黄色い声と共に部屋に鳴り響く。桜介は私に請われるままポーズを作りセリフを口にし、御堂になりきる。私はスマホを掲げながら部屋を移動し、あらゆる角度から推しを撮影する。ソファの背もたれに足を掛けて伸び上がりつむじを激写、ラグの上に仰向けになり下からのアングルで激写。
異様な熱気が二人を包んでいた。
やがて、ぜいはあと浅い息をして、私たちは倒れ込んだ。
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