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なんと彼は、そのとき勤めていた会社をあっさりやめて、ワッピを追いかけて東京へ行ったらしい。
その後、風の噂でふたりが結婚したことは聞いていたが、結局、結婚式も披露宴もやらなかったようで、さらに同窓会にも顔を出さないので会う機会はまったくなくて……。
『ねぇー、奏っち? それにしても、これってば、あの歌みたいでちょっと面白くない?』
「あの歌? いつかあなたたちが話していた、高校時代に歩くんと江上くんが私のために作ってくれたっていう歌のことかしら。私、聴いたことないから分からないわ」
『あら、聴いたことなかったっけ? あるのよ、あるのよぉ。ふたりの再会を予言した歌詞がぁ。ね? 歩せーんぱい?』
そうだ。この場面はまさに、あの歌に描いた情景そのものだ。
時が流れて 大人になって
見知らぬ街角 あなたを見つけたら
信じる心 夢見る気持ち
忘れずにいたと 微笑みなげるよ
当時、十七歳の私が、これ以上ないくらいに背伸びをして、彼女のために書いたあの歌詞の一節。
「そうだね。ワッピ、ありがと。おかげで、大事なひと言を言い忘れずに済みそうだ」
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