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ちょっと眉根を寄せて身を乗り出した彼女。
同時に、その美しく長い髪がさらりと前に流れる。
僕は小さく咳払いをして、それからわざとらしく手元の大学ノートをパタパタとめくった。
「あ、えっと、な、何部?」
「文芸部」
彼女が言ったとおり、僕は生徒会執行部の文化委員長だ。
そしてなぜか、執行部で唯一の一年生。
来月行われる文化祭は僕にとって初めての経験だというのに、致し方なく僕は実行委員会の長として上級生たちを相手にその準備に追われている。
文芸部?
めくった大学ノートを見ると、文芸部の部員数は『一名』となっていた。
そうすると彼女は文芸部の部長にして、唯一の部員ということだ。
「えーっと……、部の展示希望だよね。申請用紙、書いてくれた?」
「書いてきたわ。これでいいかしら」
そう言いながら彼女はすっと僕のすぐ横まで歩み寄って、そのB5サイズの用紙を差し出した。
とっても綺麗な手だ。
『第十二回 創立記念祭 展示希望申請書』
この前、各文化部の代表に配った、僕の手書きプリントの申請用紙。
『部長 一年九組 野元奏』
字もすごく綺麗。
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