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1-1 春風に揺れた黒髪
高校三年生 四月
「だーかーらー、もう聞き飽きたの!」
高校生活最後の一年、その始まりを告げるベルは春らしい暖かなまどろみの中で響き渡った。
今日は、三年生一学期の始業式。
もう慣れっこになってしまった始業式と学期始めのホームルームはあっという間に終わって、いまはもうお昼休み。
午後からは新入生のオリエンテーションなどが予定されているので、二年生、三年生はそれぞれの部活や委員会に散って勧誘や説明会の準備に追われている。
僕ら放送部も勧誘があるから、現在、バタバタとお弁当を口に運んでいるところだ。
それなのに、ほんと忙しいときに限ってこいつはいつも邪魔をする。
「その子の話、もう何回目?」
ちょっと恨めしい感を出した僕の横で、頬にご飯つぶをつけて息巻く栞。
こら、箸を向けるな。
ここは、『放送室』の中の一室、『ミキサールーム』。
『放送室』の入口はひとつだけど、中へ入るとコの字型になった三つの扉が僕らを迎える。
右が『視聴覚室』、左が『スタジオ』。
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