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松原さんは暫く黙っていた。何かを言いにくそうにしている感じがした。
少し下を向いて、ストローでアイスコーヒーをかき混ぜていた。
そして、決心したように顔を上げ話し出した。
「真白に相談していたというか……山口さんの事を訊いていたんです。
あの子、山口さんのこと歳が離れすぎて趣味じゃないとか言ってるんですよ。オジ、キモイとかね……側に居るだけでキモイって嫌がっているみたい。そんなことないよって、じゃあ一緒に私も観察するとか……私、言ってしまって毎日モデルまで出張っていたんです」
僕は少しショックだった。あの真面目で大人しい滝川さんが、内心そんな風に僕の事を思っていたのか……
僕が黙っていたら、畳みかけるように松原さんは僕に言ってきた。
「悪いのは私なんです。私が山口さんのこと好きになって、真白に色々山口さんの事を訊いて、スパイのような事をさせたから……真白は悪くないんです。私が悪いの……」
そう言いながら、松原さんは肩を震わせて声を殺して泣き出した。
「あなたは悪くないですよ」と僕は言いながら自分のハンカチを松原さんに差し出した。松原さんは涙にぬれた目を僕に向かって向けて来た。少し上目遣いで戸惑っているように見えた。
その顔が、とても綺麗で可愛くて僕の心がオセロのようにクルリとひっくり返った。
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