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顔合わせ当日の美沙は振袖を着て、とても艶やかだった。
僕の母は、専業主婦が大嫌いだ。僕は母が爆弾を投下しないかヒヤヒヤした。美沙は、今日のこの席が無事終わったら派遣を辞める。10月いっぱいで仕事を辞めて結婚の準備に入りたいと言っている。
美沙のその希望も事前に母に伝えてあった。その時の母の反応が凄かった。
「なんで仕事を辞めるの?結婚と無職はイコールではないでしょ!」
正に鬼の形相だった。「健太の安月給でやっていけると思うの⁈」
僕は、原理主義者の母と戦った。
「世の中には、ずっと夫を家で支えたいって言う女の人もいるんだよ。お母さんこそ、差別主義者だ!生き方は多様なんだ!」
「経済的基盤のない多様性は無いのよ!甘いわ!」
「僕を愛しているから、僕の側に居たいから専業主婦になりたいんだ!そういう女の人の気持ちは、お母さんには分かんないでしょ!」
母が喚けば喚くほど、僕は頑なになった。
僕の「恋愛してる感」に母は油を注いでいていた。
両家顔合わせは、表面上は和やかに終わった。
母は、一つのミッションを美沙に下した。
「美沙さん。結婚式まで私が休みを取れる時は、ウチに遊びに来てくださいね」
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