3、 9月 両家顔合わせ

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 一応、婚約の体裁が整ったので、すでに注文してあったH.Wのダイヤの指輪を美沙に贈った。彼女がおねだりしてきた指輪は300万円だった。僕の貯金で買った。  指輪を選んだ時、彼女は「高いよ」って言いながら遠慮がちにソレを指さした。300万の指輪。これは母には言えなかった。  次の日、彼女は左手の薬指にそれを嵌めていてくれた。会社の人に婚約したことを美沙も僕もオープンにした。  同じ班の飯田くんが呆れていた。 「H.Wの指輪?庶民の買い物じゃないっすよ」  美沙は、女子社員に囲まれて指輪を見せていた。少し恥ずかしそうに嬉しそうに……滝川さんは、気が付くと美沙の側に寄らなくなっていた。仲が良かったはずなのに、美沙からはそう聞いているのに、何かあったのか少し気になった。滝川さんは僕とは前から仕事の話しかしない。 デートの時、僕は美沙に訊いた。 「滝川さんと喧嘩したの?」 美沙は、言いにくそうにモジモジしながら教えてくれた。 「滝川さんって仕事が出来るじゃないですか……って言うか、身分が違うって感じかな。派遣の子たちに上から目線なんですよ。私なんか年上でも負けちゃう。キャリア様だから……」 少し、困った感じで言う美沙が子供っぽくて、僕は納得した。 滝川さんは、そういう人だったのか……。
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