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リリスからしてみれば、精一杯の告白だった。ヴォルフィはこれまで見たことがないほど困った顔をした。
「…………その、本当に申し訳ないんですけど……。明後日の夜、いつも通り来ていただくのは大丈夫なので」
「……ごめんなさい。無理を言って」
「あ、リリスさん……!」
リリスはそのままヴォルフィの店を出て、自宅に帰った。何もする気が起きなくて、リリスはベッドに寝転ぶ。考えてしまうのはヴォルフィのことばかりだ。
ヴォルフィはリリスの誘いにとても困った顔をしていた。
身体だけなら提供してやってもいいけれど、心まで渡す気はない、ということなのだろうか。そもそも薬局はそんなに人が来ない。仕事が立て込んでいるというのは嘘で、実は昼に恋人と会うのではないか。リリスは夜に交わるだけの存在ということなら、つじつまも合う気がする。
人は理由がわからないことに恐れを抱きがちだし、自信のなさから時に相手へ疑いのまなざしを向けてしまう。
リリスがこんな風に考えてしまった理由は一つだ。リリスはヴォルフィから好きだと言われたことがない。
ヴォルフィから精気を提供してもらっている立場であるにも関わらず、身体を弄ばれているように感じてしまう自分は勝手だと、リリスは思う。人の気持ちなんかわからないのに、勝手な推測が脳内を駆け巡って、消えない。
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