薬師ヴォルフィの理想と現実・その5

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 ヴォルフィは泊まりに来たリリスに料理を振る舞うようになっていた。蛇獣人ナータンの家で出されるお茶と菓子がいつもおいしいと礼を伝えたところ、彼の妻が料理人であることを知ったので、ヴォルフィの家でリリスが少しでものんびり過ごせるといいと思い、簡単でおいしい調理法(レシピ)をいくつか教えてもらったのだ。  ただ「胃袋をつかまれてしまいました」とナータンが惚気るのを聞いて、それも一つの手だなと思ってしまったことは否めない。餌付けというか、完全に求愛給餌である。最初は厚意でリリスに何かしようと思っているはずなのに、途中からどうしても下心が滲み出てしまう。「リリスさんが僕のことを手放せなくなったらいいのに」という下心が。
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