薬師ヴォルフィの理想と現実・その6

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「作ってもほとんどが捨てられるってことだよね?」 「……事件なんか起きない方がいいだろう?」 「それはそうだけど……」  急を要して、作業が面倒で、ほとんどが廃棄処分になると予測がついている。そんなもの、普通は作る気なんか起きない。 「ヴォルフィ、もうお前しかいないんだ。頼む」  いつもヴォルフィをからかうような調子のディーノが真摯に頭を下げている。 「……こんな無茶な依頼、今回限りだからね」 「心の友よ! 今回の代金ははずむように上司に掛け合うから!」 「絶対に犯人捕まえてよ」  警邏隊の中でディーノは微妙な立場にあるはずだ。ディーノが犯人を捕まえたら、警邏隊での獣人と亜人の立場も少しはよくなるかもしれない、とヴォルフィは考えた。  ヴォルフィは変身(メタモルフォーゼ)型なので、普段は獣人であるリスクを負っていない。リリスに対してのみならず、本当の自分を隠している引け目があるのだ。ヴォルフィはそんな思いから、依頼を請けることにした。
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