薬師ヴォルフィの理想と現実・その6

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 時間と原料を無駄にできないから、失敗は決して許されない。原料をきっかり量って、大まかに刻んでから、薬研(やげん)ですりつぶし、別の原料と乳鉢で混ぜ、乾かす。反応を見て出来を判断し、調整する。  地味なのに大変さしかない仕事だ。それでも、やれるだけやって、がんばって納品して、しばらく眠れば、金曜にはリリスが来てくれる。リリスと会うことだけを励みに、ヴォルフィは黙々と作業を続けた。  今度、勇気を出してどこかに出かけないかと切り出してみよう。最近少しずつリリスさんが打ち解けて近づいてくれているから、断られない気がする。動物に少しでも慣れてもらいたいけど、無理に関わらせて余計怖いと思われたらよくない。昔リリスさんを噛んだ犬が本当に憎い。ヴォルフィがそんなことを考えていると、来客を告げるドアベルが鳴った。
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