薬師ヴォルフィの理想と現実・その6

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 ナータンは決まった場所にしか外出をしない。森の奥で開業しているのも、あまり人目につきたくないからだとヴォルフィに話してくれたことがある。「蛇の姿は怖がられてしまうので、ヴォルフィさんは優しく接してくださって嬉しいです」と微笑みながら。困っているヴォルフィのために原料を集めるのに手を尽くし、人目につきたくないはずなのに店まで来てくれたのだ。  ナータンを見送った後、ヴォルフィは休憩がてら、差し入れの弁当を食べた。しみいるようにおいしく感じ、ヴォルフィは大丈夫だと思った。食べ物をおいしく感じるうちは、生きていける。とにかくディーノとの約束を果たそう。ヴォルフィは頬を軽く叩き、作業に戻った。
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