サキュバスリリスとヴォルフィの店

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 部屋に帰って紙袋を開けてみると小さな缶と薬が三包入っていた。試供品にしては多すぎないかとリリスは思う。包み紙に「毎食後にお飲みください」と読みやすく綺麗な字で書かれていたので、リリスは夕食後に飲んだ。  肝心の塗り薬は小さな缶に入っていて、看板と同じ意匠の可愛らしいラベルが貼られていた。缶の中身がわかりやすいように「皮膚薬 乾燥したり水を扱った後に塗ってください」と小さく記入されている。親切だ。  ヴォルフィから「眠る前に薬を塗って綿の手袋をして眠るといいですよ」と帰り際に言われたので、リリスはその通りにした。翌朝、炎症がかなり治まった手を見てリリスは感動した。思わず手を近くでまじまじと見ると、ほのかに甘いよい香りがした。  塗り薬を職場へ持っていきやすいように、リリスは「屈辱の匣」からもらったレースで小さな袋を作ろうと思った。何色にしようかと考えた時、リリスの脳裏にヴォルフィの姿が浮かぶ。焦げ茶色の髪に琥珀色の瞳。  焦げ茶色のレースをつなぎ合わせて袋を作り、琥珀色のビーズで簡素な花柄を刺すと、落ち着いた雰囲気ながらも可愛らしく仕上がった。リリスはとても気に入って、袋を毎日持ち歩くようになった。
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