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「もうやだ。一生懸命やってるのに、全然上手くいかない」
ディーノを追い返し、しばらくベッドに寝転がっていたものの、ヴォルフィは全く眠れなかった。疲れが極まった時に面白くないことが続き、却って意識が冴えてしまったのである。
現実はヴォルフィの希望を無視して、どんどん理想から遠ざかっていく。
約束を果たせなくてもディーノは許してくれたのだろう。ナータンの厚意を無にしてしまったらヴォルフィは自分を許せない。だから、苦渋の選択もきっと正しかったのだろう。とはいえ、失った機会が大きすぎるのだ。
一生懸命つなぎとめようとしても、縁なんか簡単に切れる。
ヴォルフィは最初の恋人のことを思い出していた。
お互い付き合うのは初めてで、奥手で引っ込み思案な女の子で、手をつなぐだけでも真っ赤になっていたから、キスをするのもためらわれた。ヴォルフィは彼女が自分に慣れてその気になってくれるまで、ゆっくり待とうと思っていたのだ。
ある日、彼女がヴォルフィの手をそっと握ってきた。それまで彼女の方から何かをしてくれることなんてなかったから、ヴォルフィは嬉しくて嬉しくて、次に会う時にそっとくちづけてみようと思った。その直後、強引な男に寝取られて、別れることになったのである。
ヴォルフィは意味がわからなかった。わからなかったけれど、人の気持ちは変えられないから諦めるしかないと思い、別れに応じた。
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