薬師ヴォルフィの理想と現実・その7

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 ヴォルフィは全く冷静ではなかった。どうせ眠れないのだから彼女を探しに行こう、と思った。普段ヴォルフィは満月の夜に出歩きなどしない。万が一、人前で変身してしまったら大変なことになるからだ。でも、そんなことはもう頭から飛んでしまっていた。睡眠が足りないと悲観的になり、つい、考えなしな行動をとりがちになる。過度な労働は悪である。  ヴォルフィは歩きながら考える。誘いをかけてくれたということは、祭に行っているのだろうか。人が多いところでリリスを見つけるのは難しいだろう。彼女は小柄だし、今日どんな格好をしているかもヴォルフィは知らない。  少し落ち着いて考えようと思った瞬間、ヴォルフィの鼻にリリスの匂いが届いた。リリスはこのあたりにいた。しかも立ち去ってそんなに時間が経っていない。  ヴォルフィは嗅覚に意識を集中させる。人が多いから確信は持てないが、男物の香水も混じっている気がする。ヴォルフィは苦々しく思いつつ、匂いを追いかける。  辿り着いたのは酒場だ。ヴォルフィは途中からむしろ香水の匂いを辿っていた。憎き恋敵の匂いだが、消えそうなリリスの匂いよりもわかりやすかったのである。
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