薬師ヴォルフィの理想と現実・その9

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薬師ヴォルフィの理想と現実・その9

「本当に、本当に、迷惑!」  リリスとの甘い時間を邪魔されたヴォルフィは、ディーノを睨みつけた。 「さっきの様子だと、結局付き合えることになったんだろ? よかったな、縁が強固で!」 「結果論だよ!」 「まあまあ。今回の報酬、持ってきたからさ!」 「……ありがとう」  受け取った袋はずいぶん重い。びっくりしたヴォルフィはディーノを見た。 「もうさあ、信じられなかったぜ。ヴォルフィにあれだけ無理させといて、支払い、最初はいつも通りで済ませようとしてきたんだから。強気で押しまくって、三倍ふんだくってきた」 「ありがとう。でも、無茶じゃない?」 「いいんだよ。これでようやく『注文は早く出さないとまずい』って思わせられたから。これまでいくら言っても聞き流されてたのが、痛い目見せたら一発だった」 「痛い目って、料金か」 「そう。警邏隊の台所事情はなかなか厳しい」  ディーノはカラカラと笑うが、ヴォルフィは心配になる。 「ディーノの立場が悪くなるんじゃ……」 「もともと大してよくはないし、なにより今回は犯人逮捕の手柄があったからな」  ディーノが再びカラカラと笑うので、ヴォルフィも安心して微笑み、反省する。  いかにも感性が人外だなんて思って悪かった。なんだかんだでディーノはいつも、ヴォルフィが得をするように考えてくれているではないか。  そもそも、感性と種族は、必ずしも一致するものでもないだろう。どんな種族にもヴォルフィのようになじめない者はいるし、いい者もいれば悪い者もいる。
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