サキュバスリリスへの処方箋

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 ヴォルフィは驚いたように一度瞬くと、再び笑顔を浮かべて言った。 「リリスさんの身体が楽になったのなら、それが僕へのなによりの報酬ですよ。最初は顔色が悪いのか単に色白なのか量りかねていたのですけど、体調が悪いのだとわかったらそのままにしておくことはできませんでした」 「でも……」 「えーっと、じゃあ、今度は金曜に来てくださいませんか。投薬を続けてリリスさんの体調が改善されたら嬉しいので、様子を聞かせてほしいです」  リリスがこくりと頷くと、ヴォルフィは「またのお越しをお待ちしております」と優しい声で伝えて頭を下げた。  帰り道、リリスはヴォルフィのことばかり考えていた。見た目だけではなく、彼の性格もリリスには好ましかったから。初めて会った人間の健康を気にかけてくれる優しさ。親切だけれど踏み込みすぎない適度な距離感。
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