サキュバスリリスへの処方箋

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 リリスは金曜までひたすら根性で働いた。よろめきながら、満月の光だけを頼りに、少し暗い道をリリスは進む。ようやくヴォルフィの店に辿り着いた時、彼女は倒れる寸前だった。 「リリスさん、具合が悪いんでしょう。少し椅子に掛けていてください」  リリスが扉を開けると、すぐにヴォルフィが心配そうな顔でカウンターから出てきた。 「即効性がある薬を持ってきますから」 「甘い香り……」 「甘い……? ああ、ちょうどステレラの根を煎じたところだからで」  みなまで言わせず、リリスはヴォルフィの頬を両手で挟み、唇を奪っていた。ああ、彼の唾液は甘露のよう。彼の精気もきっと……!  リリスははっとして頬から手を離し、ヴォルフィから後ずさった。 「リリスさん……?」 「本当にごめんなさい! お願い、逃げて……!」  リリスの青い瞳からぽろぽろと大粒の涙がこぼれる。突然のことにヴォルフィは驚いたが、平静を保ってリリスに近づき、彼女の頬の涙を優しく拭って問いかけた。 「どうして逃げなければならないのですか?」 「だって……私は…………サキュバスなのだもの……」
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