サキュバスリリスの独り立ち

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サキュバスリリスの独り立ち

 リリスはサキュバスの一族に生まれたが、自らの血を疎んでいた。家族や親戚のことを愛しているものの、倫理観には辟易していた。サキュバスには精気を得るために手当たり次第に捕食する者もいれば、複数の相手と円満な関係を結ぶ者もいる。リリスはただ一人の相手と添い遂げたいと思っていた。ただ、倫理は社会によって定められるものなので、サキュバス社会ではむしろ彼女が異端であった。リリスが家族や親戚を愛したように、家族や親戚も彼女を愛したが、性的嗜好に関する意見を変えることはなかった。譲れない点に相違があっても、彼らは互いを尊重しあったので、なかよく暮らしていた。そういうことはある。  サキュバスは初潮を迎えるとともに能力が顕現するようになる。顕現後は、目についた人間の男性を引っ掛けて飢えをしのぐか、類族のインキュバスと乱交するか、そのあたりが定番であった。オークのように絶倫な別種族と(つが)う者もいない訳ではなかったが、ごく少数である。オークと番うことがリリスの理想に近いのだろうが、彼らの外見にどうしても彼女の食指は動かなかった。オークを愛するみなさまには申し訳ない話だが、そう簡単に好みは変わらない。
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