サキュバスリリスの独り立ち

2/6
前へ
/131ページ
次へ
 リリスは十七歳までの五年間、男性との接触を極力避け、意志の力だけでやり過ごしていた。鋼の意志で性欲を封じ込めるようにひたすら我慢したのである。秘儀、見ないふり根性固め。もっとも、彼女の周囲はサキュバスばかりなので、男性との接触自体があまりなかったのだが。  男性の精気が得られない分をリリスは食事でまかなっていた。だが、栄養が行き届かなかったのだろう。彼女の背は低く、身体は華奢でか細い。そんな体躯でも、常にけだるさと軽い頭痛があると、身体が重くて仕方ない。リリスの趣味は刺繍と裁縫なので、体力を温存することでなんとか生き延びてきたが、意志の力には限界があるとうすうす感づいてはいた。  年の瀬に十八歳の誕生日を迎え、成人したリリスは考えた。サキュバスばかりの世界に身を置いているから自分は異端なのであり、そうではない世界に身を移せば道も拓けるのではないだろうか、と。  新年を機に、リリスは人が多い王都へ出ることにした。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加