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翌週、リリスは裁縫道具を持ってヴォルフィの店にやってきた。仕事帰りの人も利用できるように、ヴォルフィは少し遅い時間まで薬局を開けている。最近リリスは営業が終わるまで奥の部屋で待つようになっていたので、その間に籠に入れてあったシャツと使い捨て雑巾として切った生地を受け取って作業をした。
「すごい……!」
ヴォルフィの感嘆の声を聞き、リリスは店の営業が終了したことに気づいた。作業が終わっていなかったので、集中して黙々と進めていたのだ。
「ごめんなさい。まだ全部は終わってなくて」
「このボタン、綺麗ですね。縫いつけている金の糸もいいな」
「貝ボタンに変えたら素敵かなと思って」
「袖口の擦り切れと穴もわからなくなって、新品みたいです」
「同じ生地があったから、目立たず綺麗に直せました。かけつぎという技術を以前教えていただいたことがあるんです」
「それは何をなさっているんですか?」
ヴォルフィはリリスの手元を指して言った。彼女が青い糸で何か縫っていたから。
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