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サキュバスリリスはいろいろ気になる
リリスがヴォルフィの店へ向かっていると、民家に数名の警邏隊員が訪れていた。持ち主らしき人物に聞き取りをする者と、被害に遭ったと思しき小屋を調べている者がいる。リリスは奥様方の話を思い出した。『納屋を壊されたり、家畜が襲われたり、畑が奇妙な形の足跡で踏み荒らされたりしていたそうよ』。愉快犯なのか、それとも何か別の目的があるのかはわからない。どちらにせよ、大切にしているものを壊されたらたまらないな、とリリスは思った。
ヴォルフィの店が営業終了するまで、リリスが彼の服を整備するのは習慣になりつつあった。支障があるものだけではなく、特に問題はなさそうなものも全て見せてもらっている。ほつれかけている部分を縫ったり、四つ穴ボタンの糸の縫い留めを交差する形にしたり、ちょっとした工夫で丈夫さが増すように変えるのだ。リリスはヴォルフィの服を見て、気に入ったものを長く着続けるのだなと思った。
「リリスさん、いつもありがとうございます。とても丁寧に繕ってくださるから、服に愛着が増しています」
営業を終えたヴォルフィが笑顔でリリスに礼を言う。
「どの服も大切にしておられるんだなあって、よくわかります」
「僕は好きなものが決まっていますし、好きなものはずっと好きなので」
ヴォルフィらしいなとリリスは思う。服といい、部屋の調度といい、長く使うことを前提に購入しているのだろうという印象を持った。
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