サキュバスリリスはいろいろ気になる

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 ふと、リリスは道すがら眺めた民家のことを思い出す。 「大切なものは守りたいですよね」  リリスはあまり話が上手くない。ヴォルフィは話のつながりがわからず、困惑の表情を浮かべている。 「ここへ来る時に、被害に遭った民家を見たんです。犯人が何を考えているのかわからないですけど、大切なものを壊されたら嫌だなあと思って」 「……早く、犯人が捕まるといいですよね」  そう言ったヴォルフィの表情は冴えないままだった。  二人はいつも通りベッドへ向かう。ヴォルフィのベッドの近くには花の鉢植えが置いてある。五枚の花弁を持つごく小さい可憐な花が鞠のような球形に集まっていて、遠くからだと丸い花がぽんぽんといくつか咲いているように見えた。不思議な形で可愛らしい。 「もしかして、看板やカードの印は、この花を模しているのですか?」 「そうです。ステレラといって、僕の一族が代々育てています。ちょっと扱いが難しいので、絶対にさわらないでくださいね」 「わかりました。近くで見るのは大丈夫ですか?」 「見るだけなら大丈夫ですよ」  濃い赤紫色のつぼみから白に近い淡紅色の可憐な花が開くのが不思議で、リリスはまじまじと見つめた。ふと好ましい香りがリリスの鼻腔を刺激する。ああ、これは、葉の緑と花の甘さが混ざったヴォルフィの匂いだ。
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