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「リリスさん、植物はお好きですか?」
「え?」
「じっと見ておられるから」
「そ、そうですね。刺繍の意匠によく使いますし、綺麗なので」
ヴォルフィのことを考えている時に、当の本人から話し掛けられ、リリスは動揺した。ヴォルフィは少し天井の方を見て、再びリリスに問う。
「じゃあ、動物は、お好きですか? 犬とか、猫とか」
「えっと、あまり。小さい頃、近所の方の飼い犬に嚙まれたことがあって、それ以来、牙を持つ動物はちょっと怖いです」
「……そうですか」
ヴォルフィはそれきり黙ってしまった。普段ヴォルフィとの会話が一往復で終わることはほぼない。彼はちょっとしたネタも拾ってくれるし、なにかしら関連づけて話を膨らませてくれる。話が上手くないリリスの言葉をいつも丁寧に聞いてくれるし、楽しませてくれるのだ。だからこれで話が終わるのは珍しいなと、リリスは思った。
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